・・・くださーい」
・・・せんかぁ〜?」
ん? 誰か呼んだか? 今何時だ。1時じゃぁねぇか。空耳か? しょうがねぇなぁ、寝直すか・・・
「ごめんくださーい、 先輩いらっしゃいませんか〜?」
んん? 先輩? 俺のことか? 一体誰だ、こんな時間に。 たく、時間を考えろってんだ、こんな真昼間っから。
「今、開けるからちょっと待て」 しょうがねぇなぁ。
ガララッ 一体誰だこんな真昼間に人を起こしやがって。
「ア、先輩。お久しぶりです」
「オ、なんだおめぇか。久しぶりだな。 って、誰だっけ?」
「いやだなぁ、僕ですよ。もうお忘れですか?」
「忘れちゃぁいねぇよ。与太郎だろ?」
「違いますよ」
「まぁいいさ、熊」
「へ? 熊ですか?」
「名前なんかどうでもいいじゃぁねぇか、八。
で、いってぇ何しに来たんだ。こんな名古屋まで。
まさか物見遊山ってぇ訳じゃぁあるめぇ?
こんな見るもんもねぇような所へ」
「それがですね。あっちも最近じゃぁ閑になっちゃって。
で、こっちへ来れば少しは稼げるんじゃないかって・・・
先輩もいるし」
「馬鹿だなぁ、おめぇは。少しは新聞を読んで勉強しろってんだ。
いま、この国で一番不景気なとこへ来るなんて」
「不景気なんですか? 少しは回復したんでは・・・」
「ここは不景気なんてもんじゃぁねぇ。ここの連中がいってぇ
何食って生きてるんだか不思議なくらいだ。
んなことより、さっさとけぇって仕事に精出しなよ」
「だめなんです。あっちはきれいさっぱり清算してきちゃったもんで」
「あちゃぁ。気のはぇーこった。
で、これからどうすんだい」
「いや、だから、先輩とおんなじ事を・・・」
「おめぇが雲助やるって? この名古屋で?
まぁ、出来ねぇってこたぁねぇだろうが、
大変だよ」
「それは覚悟してます。僕だって今まで営業で外回りをやったり
出張サービスで車で走り回ったり、タクシーの経験もありますし。
トラックで長距離もやってますから大丈夫ですよ」
「それなんだよ。おれだってね、おめぇと似たようなことぉやって
来てるんで大丈夫だって思ってたんだけどね? 所が実際に
ここでハンドル握るってぇと、今まで経験したことも無いような
とんでもないことばっかに出くわすようになるんだよ」
「とんでもないことですか?」
「よし! けぇれねぇってんならしょうがねぇ。こんなおれだって
おめえから見りゃぁ先輩なんだから少しは手伝ってやろうじゃぁ
ねぇか。名古屋走りってぇ奴を教えてやるよ」
「名古屋走り!? そんなのがあるんですか?
インベーダーゲームで名古屋打ちってのは聞いたことが・・・」
「とにかくだな。この名古屋走りをマスターする必要はねぇが
名古屋走りがどんなもんかしらねぇってぇと、事故の元だからな」
「先輩、ありがとうございます。で、いつから・・・」
「明日の朝一番に、ここに来い。車庫から出るところっから
教えてやるから」
「よろしくお願いします」
99/11/14