| 「 | U-ターンするのに1年の2/3もかかるなんて・・・」 |
| 「 | 悪かったな〜! 仕事が忙しい時ってのはそれほど疲れねぇもんだし、気分も乗るから帰ってきてからでも結構いろんなことをやる気にもなるんだが、あまりにも暇な日が続くってぇとすっかり疲れちまって帰ってきてからなんかやろうってぇ気になかなかなれねんだよ」 |
| 「 | う〜〜ん、分かるような気がしますけどねぇ。それにしてももう秋ですよ」 |
| 「 | まぁそう言うなって。で、次の・・と言うかさっきの交差点を右に曲がれや」 |
| 「 | はいはい。あらら、さっきのU-ターンでもたもたしてたからまた赤ですねぇ。 今度は何も無いでしょうね」 |
| 「 | そう度々なんかあるわけじゃぁねぇよ。 しかし、ちょっとお行儀がよすぎるなぁ」 |
| 「 | どういうことですか?」 |
| 「 | 今、右折帯はがらがらなんだから、今のうちに停止線まで進んどいた方がいいんだがなぁ。じゃ無いと後で困ることになんだよ」 |
| 「 | だけど、そうするためには斜線の部分を走らなければ行けませんよ。いや、それだけでは無理ですね。黄色のセンターラインを超えないと前へは出られませんけど」 |
| 「 | ん〜〜、ま、いいか。自分で困ってみるのも経験だしな」 |
| 「 | また始まったぁ。やっぱりなんかあるんでしょ?」 |
| 「 | 後ろからくる車を見ててみな。この信号で右へ曲がろうってぇ車は結構多いんだよ。これがヒントだな」 |
| 「 | 右折車が多いってことがですか? あ、ほんとだ。みんなさっさとセンターラインを超えて前へ行っちゃいますねぇ。こんなに簡単にセンターラインを超えても良いんですか?」 |
| 「 | 本当はいけねんだろうがねぇ。しかし、後のことを考えると、これも一種の方便かねぇ」 |
| 「 | 方便って? あの嘘も方便って言うあれですか? あ、また3台くらい連なって・・。ねぇ先輩、あたしらの横に並んじゃいましたよ。前の方なら右折帯だからセンターラインの内側なんで良いんでしょうけど。この辺だともう完全にセンターラインを超えたままなんですけど」 |
| 「 | だから言ったろ? さっさと前に出て置けって」 |
| 「 | あの・・・。先輩? 前の信号が青に変わって直進車は行っちゃったんですけど・・。それなのに右に車がいて、右へ寄れないんですけど・・・。後ろの直進車が怒ってる気がするんですが・・」 |
| 「 | 気がするんじゃなくて、真剣に怒ってんじゃねぇかな。だから言ったろ?って今更言っても始まらねんだが。後ろの車に迷惑を掛けることになるし、結果的に自分も困るだろ? ま、右折車が多い割には右折帯が短けんだよな。そうなるとある程度は違反承知で前へ出ておかなくっちゃなんねぇってのも分かるだろ? クラクションをやたら鳴らすのもいけねんだが、今日は結構鳴らしてるしな。それだってそうしなけりゃ危ないからなぁ」 |
| 「 | だけど、あたしは早くっから右折の合図してたんですけどねぇ。それなのにその右を塞いで停まるなんて・・・」 |
| 「 | そこまで見てねんだよ。仮に見てても、人より先に行きたいって連中ばっかだからなぁ。きっと右に並んだ連中は、合図を見ながら『このぼんくらが』くらいに思ってたんじゃねぇかな」 |
| 「 | そりゃぁそうかもしれませんけど、それでは全体の流れが・・」 |
| 「 | だから、それを言うならおまえだって後ろの直進車の前を塞いでるってことになるだろ? 俺だってね、最初は抵抗があったよ。そんなことしたこたぁなかったからね。だけどね、へたをすりゃぁ一信号右折できないままなんてことにもなりかねねぇだろ?後ろの直進車だって道連れだしな。右に並んだ連中は人を出し抜くことしか考えてねぇから譲ってくれるなんてぇこたぁ期待できねぇし。問題はお客さんを乗してるって時だな。そうなるってぇと、運転手が困るってだけでは済まなくなって来んだよ」 |
| 「 | そんな冷たい言い方をしなくっても・・・」 |
| 「 | おいおい、なんか急に女々しくなりやがったな。ほれ、対向車が切れて右折し始めたから今のうちに窓を開けて、手を出して頭を下げながら強引に突っ込め」 |
| 「 | しかし、こんな経験は初めてですよ。こんなことって結構あるんですか?」 |
| 「 | ん〜、まぁなぁ。中心部へ行くってぇと、幹線が何本も通ってるから右折車も分散するんだろうが、中心部を外れるってぇと、中心部へ向かう道が限られて来るもんだから、右折車の集中する道と言うか、そう言う交差点があるのは確かだな」 |
| 「 | だけど、そういう時ってジレンマと言うか葛藤と言うか、そう言うの無いんですか?」 |
| 「 | そんなこと考えてたら名古屋じゃぁ運転できねぇな。今のとまるで逆のことだってあるんだから」 |
| 「 | 逆のことですか!? それって?」 |
| 「 | 右折帯があるにもかかわらず、直進車線から右折しなくっちゃなんねぇ何てこともあるってことさ」 |
| 「 | だけど、それじゃぁ、それこそ後ろの直進車に迷惑では?」 |
| 「 | 名古屋では良くあるんだが・・。右折帯のある交差点で右折帯のあるところの反対側、つまり右側に対向車が駐車しているなんてことがあんだよ。そこで信号待ちのときに右折帯に停止してみな? 交差してる道から曲がってきた車は通過できねぇってことになるだろ?そうなれば当然、右折するつもりでも直進車線に停止するしかねぇじゃねぇか」 |
| 「 | そんな酷い事が良くあることなんですか?」 |
| 「 | 良くあることなんだよ。で、信号が青になれば当然のごとく対向する直進車がこちらの右折帯を通過して行くってわけだ。そんなときにこっちが規則だからって右折帯にいてみろ。対向する直進者は駐車中の車の後ろに繋がっちまうじゃねぇか。しかもこっちが右折できるように間を空けてくれるなんてことは期待できねんだから。するとどうなる?」 |
| 「 | こちらは右へ曲がれませんよね。で対向車だって右折車と駐車中の車が邪魔で通過できない・・・。と言うことは巴みたいになるんですか?」 |
| 「 | ということだ。こちらは直進車だから優先だと突っ込んでくんだろ? 次のやつだってそうだ。で、間を空けて譲るなんてのは頭の中にはないからどんどん詰めてくる。以前これが原因でドンパチをやらかした馬鹿がいたけどね」 |
| 「 | それだけのことで?」 |
| 「 | それだけのことで! 身動きの取れなくなった車をそこにほっぽり出して事務所まで拳銃をとりに行ったてんだから・・・」 |
| 「 | 恐いとこですねぇ」 |
| 「 | 帰りたくなったろ?」 |
01/09/13