口は災いの元
(口を利くのが怖い)


あたしゃねぇ、どうも余計な一言が多いらしい。おかげで首にされたり、本社に呼び出しを食らったりろくな事がねぇ。

それというのも、冗談の通じねぇ奴が多いのが原因じゃぁねぇかなぁ。余所に居た時には冗談で通じた事が、ここではまともに取られて、文句を言われるはめになる。ま、そればっかじゃぁねぇんだが。

以前、余所から来たお客さんだったんだが、ちょっとした冗談が受けてね、目的地に着くまで、笑いすぎるくらい笑いながら行ったことがあって、そん時にチップをたっぷりもらったもんで味を占めたってぇのか・・・。

受けた冗談てのがどんな奴だったかってぇと、

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母娘連れが乗ってきた。
「運転手さん、○○ビルね」と娘。
はいっ、○○ビルね。

すると母親が
「運転手さん、○○劇場ね」

この○○劇場ってのは、○○ビルの中の上の方の階にあるんでね、
お客さんそれは無理だ。○○ビルまでは行けるけど、○○劇場へは、この車では行けませんや。

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他愛もねぇ話なんだが・・・。 これなんかは単なる冗談で済むわけだ。

ところがね、普通の世間話なんかをしてて、うっかりした事を言ったお陰で後で痛い目にあったなんてこたぁ誰でも経験あると思うんだが、この商売では結構多いんだよ。

そうだねぇ1日に14〜5回の仕事をするってぇと5〜6回はあるかねぇ。大体1/3位はあるね。その結果ね、お客と話をするのが怖くなるって運転手は結構多いんだよ。ま最終的には、あんなやつとは口も利きたくねぇというのが本音になってくる訳だ。

そうなると肝心なこと、つまり行き先の確認なんかも怖くてやってらんねぇってなことになって、更にトラブルの元になったりしてね。


越えられない

99/06/30

「行先位は正しく」でも書いたけど、越える、越えないって奴だ。

「運転手さん、○○の信号を南に行くと歩道橋があるから、それを越えたら、停めて」
「お客さん、歩道橋は、歩行者用ですから、車で越える事はできませんや」

これは冗談のつもりだったんだけど、翌日未明に会社に戻ると、客から苦情の電話が来ていて、営業所長が出てくる朝まで待っていろだと。
「お宅の運転手は客の言葉尻を捕まえてあげ足取りをする」ってんだ。


乗車拒否?

00/09/10

何年前のことだったかなぁ。乗ってきた客に行き先を聞くと、今いるタクシー乗り場の前の道を渡って、坂を登ったとこの信号の角でね。500メートルも無いとこだったもんだから、
「お客さん近いですよ。歩いたってすぐですけどねぇ。」
「なんだおまえは、近いからと乗車拒否するのか」
「行けと言うのなら行きますけどね」
なんつったって近いからね、前の信号が青になって走り始めたら、十数秒だよ。
「こちらです」
「ん?着いたのか?」
「着きました」
「ほんとにここか?」
「ほんとにここです」
「ばかに近いじゃないか」
「さっきそう言ったでしょ」
その客はね、自分で行けといった手前、文句も言えず、むっとしながらも
「ほれ」と千円札を放り出して降りていったよ。もうけ!


乗車拒否はしません1

00/09/10

同じように近い場所の客。しょうがねぇなぁ。文句は言われたくないし。
「はい、分かりました」
と威勢良く返事をしといてね、腹ん中では大きなため息だよ。信号が青になって走り始めて十数秒。
「はい、こちらになります」
「え? もう着いたの? なんだよ。こんなに近いのかよ」
「はい、歩いても5分は掛からないと思いますが」
「なんで最初にそう言わないんだよ」
「はい、以前他のお客さんの時にそう言いましたら、『おまえは乗車拒否するのか』と怒られましたから」
「冗談じゃぁない。これは詐欺だよ。金なんか払えるか」
最初に腹ん中でため息を付いた訳がこれで分かったろ?
どっちに転んでも文句を言われるんだよ。


乗車拒否はしません2

00/09/10

お爺さんが乗ってきたんだが、この時の行き先は隣の駅だった。話を聞くと、うっかりしてて乗り過ごしてしまったってんだ。確かにこの駅の場合反対のホームへ渡るにはかなり長い階段を使わなくっちゃぁならねぇんだ。しょうがない、年寄り見たいだし黙っていかなくっちゃな。って自分を納得させてね。しかしね、この隣の駅にはね、市の中心部以外では唯一のデパートがあってね。中元、歳暮のシーズンは周辺が大渋滞するんだよ。
「なんだよ、運チャン。結構混んでるじゃないか」
「えぇ、今はお中元の時期ですからねぇ」
「知ってたのかい」
「そりゃぁ、あの駅で仕事をしてる運転手は誰でも知ってますよ。だから、みんな、この時期こっち方面のお客が乗らないことを腹ん中で祈ってるんですよ」
「知ってたんなら何で言ってくれないんだよ。電車で行ったのに。まして、こっちの混んでるとこへは来たくなかったんだろ」
「混んでますよ、なんて言ったら大変ですよ。『混んでようがなんだろうが客が行けって言ってんだから素直に行きゃぁいいんだよ』とか『乗車拒否しようってんなら陸自に言うよ』とか降りるまでグダグダ言うお客さんが多いですからね」


気は遣いません

00/09/10

この話はあたしの仲間の運転手が憤慨して話してくれたことなんだ。乗ってきた客が、
『今日は疲れたなぁ、たまには早く寝るか』
てなことを言ったらしいんだ。
「本とにお疲れのようですね。朝早かったんですか?」
と言った途端
「朝が早かろうが遅かろうが、おまえには関係のない話だろう」
愛想も言えないってぼやいていたっけ。


行き先の確認もしない

00/09/10

「行き先位は正しく」でも書いたけど、ポイントの指示ではない場合、しかもどっちからでも行けるなんて言う場合は、その具体的な場所を確認しなければ走れないんだよ。だけどね、それの分からない人がいてねぇ。
「○○」
「○○のどのあたりへ?」
「分かんねぇの? ○○だって言ってんのに」
「○○は分かりますよ。ただそのどの辺か・・・」
「○○が分かってんなら行けよ」
「いえ、右か左か・・・」
「乗車拒否するってこと? そんならそれでもいいよ。陸自に言うから」
「目標を教え・・・」
「だからさっきから言ってんじゃん。○○だって」
「○○は分かりましたから右か左・・・」
「もういい! ドアを開けてくれ。他のに乗るから! 陸自に言っておくからな」
このタイプは多いんだよなぁ。こういう奴に限って、勝手に左に曲がったりすると
「どこ行くんだよ。おまえさっき○○なら分かってると言ったじゃぁないか。何で右に曲がらないんだ。遠回りすると陸自に言うぞ」
「だからさっきから右か左か・・・」
「言い訳したって駄目だよ。こんだけ遠回りをするような運転手は辞めさせなきゃ」
何かと言えば陸自だ!


その後の指示を仰がない

00/09/10

「おい、○×の交差点は知ってるか? ん、分かるかそれなら行け」
で、指示された交差点で、
「お客さん○×の交差点ですが・・・」
 (このお客、この後はどちらの方へ?と言う言葉をさえぎってね)
「そんなことは見れば分かる。それとも何か、この俺が乗ってるのがそんなに気に入らないってのか? 早いとこ降ろしてしまおうと考えてるのか?」
「いえ、そう言うわけじゃぁ・・・」
「こんなとこで降ろされたって困るんだよ。俺んとこは未だ先なんだから」
 (あ〜ぁ、始まった。人の話なんかまるで聞いてねぇよ)
「そもそもおまえは生意気だ!」
 (ってろくに話もしていないのになんで生意気なんですかねぇ)
「格好つけて東京弁なんか喋りやがって。会社に報告しておくからな」
 (いったい何を報告するんですかね)
「何をされてもあたし等はどうしようもありませんが、この先の指示をして頂けないと走れないんですが」
「おっ! 開き直ったな。おまけに脅しを掛けようって言うのか」
もうこうなったら、言いたいことを言い終わるまでは行き先の指示が出ないので、諦めて沈黙・・・。時間を返してくれ〜〜。


何時の間に寝たの?

00/09/10

二人連れで乗ってきて、一人が降りた後、次の行き先を再確認して走り出すだろ?
2〜3分で次の指示の場所に通りかかってもその先の指示がない。
「お客さん、この先は?」
「真っ直ぐだ」
未だ真っ直ぐ走ってもいいんだろうかなんて思いながら1〜2分位経ったとこで急に怒鳴られたりする。
「どこまでいくつもりだ。俺が寝ているのをいいことに料金を稼ごうって言うつもりか?」
さっきのお客さんが降りるまで元気に話してたじゃないか。その後指示されたとこで、聞いたら
「真っ直ぐ」
って言ったじゃないか。3分か4分しか経ってないのにいったい何時の間に寝ちまったんだい?


話し掛けてはいけないタイプは?

00/09/10

最近はどんなタイプの人には話し掛けてはいけないか、と言うのが段々分かってきたね。
同じ名古屋市内でも、地域によって住んでる人の性格にも色々差はあるんだけど、同じ区内でも更に分かれているようなんだな。

まず第一のタイプは、「見えねぇんだよ」でも書いたけど、合図もせずにドアの横に立って、ドアが開くのを何時までも待ちつづける人。だいたいこう言ったタイプの連中は話をしてもかみ合わないことが多いね。中にはね、車内を覗きこんで運転手が前を見てるのにそれでも待ってる奴がいるね。自分の方を見ていないのが分かっても、注意を引こうとしない奴は、まず脳みそが薄いね。タクシー乗り場と言っても歩道に看板が立ってるだけのところでは、歩道だから、歩いて通りすぎるだけの人のほうが多いわけだ。乗らないのに運転手の顔を覗きこんでいく奴。乗るのにそっぽを向いて通りすぎる奴。どうやって見分けろってんだって言いたくなるだろ? で、気を利かしてドアを開ければ、乗る気のない奴はドアを蹴飛ばしていくし、乗るつもりだった人には、どうして乗ると分かったんですかって気持ち悪がられるし・・・。

第二のタイプは乗り場の先頭のタクシーが客を乗せたあと、2台目のタクシーがドアを開けてても、しかもそれを見ていながら、2台目の方へ行かないで、2台目の車が自分の前まで来るのを待ってる奴。特に傘がないのに雨に濡れながら待ってる奴は大抵、脳みその薄い奴が多い。その後ろにいる客なんか怒ってるんだよ。何でさっさと乗らねぇんだってね。その後ろの人が気の短い人の場合なんか一台おいてその後ろの車にさっさと乗りこむこともあるけどね。で、この二つのタイプに共通してるのは殆ど基本料金で行ける距離の奴だと言うことも最近分かってきたね。全部が全部そうとは言えないが、近い奴に限って横柄だ。で、どう言う風にかみ合わないかって言うとね、

まず行き先を聞いて確認をするわけだ。
「○○町ですか? あ、××を目標で? はい、分かりました。ところで、2〜3日前でしたっけ○○町で、こんなことがありましたよね」
「あ、運転手さん○○町ですよ。分かってます? ▲▲の信号から曲がってね。目標は××ね」
分かってるからあの町であったことの世間話をしようとしてたんじゃぁないか。

「はい、○○町ですね。そう言えば昨日乗っていただいたお客さんで・・」
「え? あたしは昨日は乗ってませんけど」
あたしゃね、あんたの話をしてんじゃぁねぇんだよ。

お客さんが二人で、今日行って来たコンサートの話をしているんだが、あたしだってそういうのは好きなんで割り込んじゃったんだよ。
「え? お客さん、○○交響楽団のコンサートに行って来られたんですか? いいですねぇ。指揮は? ソリストは? うわ〜〜羨ましい。で、演目は?」
「うん、クラシックだよ」
んなこたぁ、分かってるってんだよ。だって、△▲指揮で、○○交響楽団が演歌なんかやるかよ。あたしだってね、タクシーの運チャンになる前は、有給休暇が自由に取れるサラリーマンだったからね、年間12万円くらいコンサートに遣ってた時期だってあるんだから。いつもS席でね。それも何時も同じシートで。