この一番険悪な時期ってのは何とかならねぇもんかねぇ。え?険悪ってぇどういう意味かって?ま、続けて読んでくれりゃぁ分かるさ。
この時期には、普段めったにタクシーになんか乗らねえってぇ客が、会社からチケットをもらったりしてね、でけぇ顔して乗ってきやがる。普段めったに乗らねぇ癖にいつも乗ってるような顔して偉そうに「俺は客だ」って威張るんだよ。そんなもん態度見てりゃぁすぐに分かるんだけどねぇ。って、これは法人タクシーの会社に居たころの話だけど。
でね、タクシー(それも中心部で仕事してるような連中)は、又この時とばかり乗せてやってんだってぇ顔するもんだから、いざこざが起きるってぇ訳だ。で、この険悪なムードをそのまんま住宅街の地下鉄の駅で待ってるタクシーにまで持ち込むいやな客が増えるってぇのがあたしらの悩みでねぇ。
そんな奴が乗ってくるってぇと、あぁこいつは普段タクシーなんか乗った事のねぇ野郎だなってすぐに分かるってぇ訳だ。それなのにその客はこの時とばかり威張り散らしやがる。
99/12/15
金曜日の深夜、厳密に言うと土曜日の午前0時半ころの事だ。市の中心部を走っていたら、信号が赤に変わったんで停まった。すると右のほうにいた若い男が、横断歩道を走って渡って来てドアの横に立ったんでね、ドアを開けたら頭を突っ込んできて「桑名までいくらですか」
桑名だって川を越えたばっかのとこか奥の方かによって料金も変わるんだよ。でね、「どの辺ですか」って聴いたら駅のそばだってんだ。高速でいきゃぁ高速代は別にして大体8000円から9000円かなって言ったら驚いたねぇ。客がじゃぁ無いよ。あたしが驚いたんだよ。「やっぱ金曜日は高いんですね」って言いやがる。
腹の中でこの野郎と思ったけどね、その辺は知らん顔で、「金がねぇんだったら他を当たってくれ」って突っぱねたよ。いってぇ何考えてやがんでぇ。冗談じゃぁねぇ。閑な時ならねぇ、とっ捕まえて遊んじまうんだが、忘年会シーズンの金曜日の一番いい時間帯に遊んでるのは馬鹿らしいからやめたんだけど。
遊ぶってのはどう言う事かって? 「あんたは仕事をしているのに給料を削られても平気なのかい」とかね「新幹線に乗るときにはいくら値切るんだい」とかね。「飛行機に乗るときに値切って『その料金ではここまでだ』って途中で下ろされたらどうすんだい」とかね。
よそから来た人が驚くのは、「名古屋の人はデパートで値切る」って事なんだそうだ。あたし自身はデパートは中元とお歳暮の時にしか行かないから知らないけどね。友人とデパートへ行った時にその友人が値切るんで恥ずかしくって他人の振りをしたよというその人に、名古屋の人はタクシー代さえ値切ると言ったら目を丸くしていたね。ま、恥知らずの名古屋人にしか出来ない芸当だろうね。しかし、それよりもっと性質の悪い奴がいない訳じゃぁねぇんだが、それは次で・・・・。
99/12/15
今までも、人(同僚)から聞いた話で、悪い奴がいるってぇ話は知っていたが、今日(14日)初めてそれに出会ってしまったってぇ情けねぇ話だ。
今までにもいろいろ聞いた話で知ってはいたんだがねぇ。
例えば、乗ってきた客が「北住宅」と言ったとする。いつも居る地下鉄の駅から行く北住宅ってのがA北住宅だったので何の疑問も持たずに勝手にA北住宅へ行った運転手は、その客に「何だってこんなに遠回りするんだ。俺が行きたいのはB北住宅だ」って怒鳴られたってんだ。しかもその客は「金なんか払えるか」と怒って降りていったと言うんだね。確かにこの辺にはその他にC北住宅ってのもある。確認しなかった彼は悪いんだが正確に言わなかったその客も悪いんだよ。
これだけだったら、確認しなかった彼が悪かったと言う事でおしまいなんだよ。ところが、彼は自分が間違ったと思ったもんで諦めて走り出したものの、その客が気になったんでミラーをチラッと見たら、その客はそのA北住宅へ入っていったってんだ。つまり彼は間違ってはいなかったんだよ。その客が上手で、怒った振りをして、料金を踏み倒したってぇ訳だ。
もうひとつ聞いた話を書いておくか。 あたしがいつも居る駅の隣の駅で仕事をしている運転手がぼやいていた。ある時乗せた客がそこから1500円程の距離のところまで送ったら一万円札を出したと言うんだ。これだけでも非常識ものなんだがねぇ。この後の話が如何にも名古屋らしいと言うか。たまたま釣銭が無かったのでそう言うと「釣銭が無いのはおまえが悪い」と言って降りていこうとしたと言うわけだ。釣銭を用意していたが、非常識な客ばかりで、「用意していた釣銭が切れた」と説明しても納得しないと言う。大体1500円ばかりのところで1万円札を出すだけでも非常識なのだが、釣銭が無いと言うだけで、降りて行こうとするその客に驚いて、その運転手は「あたしはいつもあの駅に居る」「誰でもいいからあの駅からタクシーに乗るときにあたし宛に今の料金を託してくれればいい」と言っておいたがそれっきりその客にあわないし、その客から言付かったと言う話も無いってんだ。これなんかまるで始めから料金を踏み倒す目的で乗った見たいなもんだ。
今日あたしが出くわしたのも、この後者のほうだね。この寒い時期、タクシーの前の信号が赤なら(つまりお客が乗ってもすぐに動けない状態なら)2台目だろうが3台目だろうが、ちょっと歩けばすぐ乗れる場合、自分から歩いてくるのが普通なんだが、それにもかかわらずタクシーが自分の前に来るまで乗らずに待ってる客ってのは大体近い(基本料金)客か威張り散らす客に相場が決まってるね。
その客も、そのいつまでも待ってるタイプの奴だったんだ。それだけでもう「うぇ〜参ったなぁ」。そこへ持ってきて、その客は乗ってくるなり、行き先を間違えて今居る場所を指示したんだよ。もし本当に間違えたんなら余程酔ってるな、もし間違えた振りをしてるのなら間違いを指摘したとたんに絡んでくるなと思ってね、あたしもほんとの行き先を言うまで待ったんだ。すぐにその客も正しい行き先を言ったんでね、あたしも信号が青に変わったところで走り出したんだよ。走り出して2分位かな。「そこでいい」ってんでね停まったらね、あぁでもねぇこうでもねぇって財布ん中を捜してね、「ほれ一万円」て出す訳だ。歩いたって5分位のところだけどね、酔ってたり体調が悪かったりすりゃぁ、タクシーを使うってのはしょうがないよ。だけどね、済まんでもなけりゃぁ悪いでもない。当たり前見てぇな顔して1万円札を出すかい?普通。少なくともあたしより十は年上に見えたよ。そんな奴が、こんな常識も無いのかって思うと同時に「さすが名古屋」って思ったね。これは踏み倒す手だなってね。たまたまこん時は用意していた釣銭がその直前の客〈これも960円だったけど〉で出ちゃったば
っかだったんでね、「えぇ!? お釣りが無いんですが」といったら、その客も演技が下手だったねぇ。待ってましたとばかり「そんな事言うんなら降りるぞ」だって。『ほ〜〜ら、おいでなすった』。で、あたしもねその直前の客が出した1万円札を見せて、「あたしだってさっきまで用意してあったんですけどね」と言ってやったよ。
するとね、これも薩摩守の常套手段で、「俺は客だぞ」〈お約束〜〜)。「おまえの名前は」。運転手の中には悪いことをしていなくても名前を聞かれると何か悪い事をしたかって心配になってね、「料金は良いです」と逆に逃げ出す奴もいるらしい。だけどね、釣銭は用意していた訳だし、それもその直前にやっぱり常識の無い奴に出しちゃった訳だろ。それに600円の料金に1万円札を出すなんていう非常識なことをしましたってお上に訴える馬鹿は居ないだろうし、もし訴え出たとしても、そんな訴えをお上が聞くわけも無いのでこっちはちっとも怖くないからちゃんと名前を名のったよ。すると耳が遠いらしくって「名刺をよこせ」。名刺は有りませんとは言ったもののあんまりうるさいんでね、タクシーカードをやってね。で、釣銭が無いのはあたしが悪いみたいな事をあまりうるさく言うもんで、料金メーターを指差して、「見てみろよ、料金は600円なのに1万円札を出すなんて常識を超えてるってもんだ」ってね。で、0時半だよ。それも年末の。ま、こんだけ「非常識」だって言っとけばどんな厚顔無恥な人でも少しは堪えたろうってんでね、「時間が無駄になるだけだから、金は要らな
いから降りてくれ」って言ってやったら、今度は急に只乗りしたって言われたくないからって小銭入れを引っ張り出してねぇ、500円玉と100円玉を出した。つまり料金をきっちり持っていたわけだ。じゃぁさっきまでのは単なる嫌がらせだったってぇのか? それとも、自分の非常識を棚に上げて陸自に直訴するためにあたしの名刺が欲しかっただけ?
そういえば、「600円の料金に1万円出すなんて非常識だ」って言った時に「それじゃぁおまえの常識のとこまで行け」なんて言ってたな。だけどね、あたしの常識で(と言うかこの名古屋最大手のタクシー会社で教えられたことでもあるんだが)1万円札を出しても良い料金てのはその半額以上、つまり5000円以上ってことだから、それをやった日には今度は遠回りしたなんて訴えられるんだろうなと思ってやらなかったけどね。あたしだって、そこまで馬鹿じゃぁねぇよ。
99/12/15
今日は三隣亡だぁ〜〜。何で今日はこんないやな客ばっかりだったんだ〜って日がたまにある。あたしにとって今日(14日)がそれだったんだよ。それも親切を仇で返されたってぇか・・・・。
終電が行った後、ふらふらと若い男が現れた。こいつがあたしの車の横に立ったんでドアを開けたら、頭だけ突っ込んできて、この辺にビジネスホテルはありませんかってんだ。東のほうの三つ先の終点に有るんでそう言ったら、他には・・・ってんだ。二つばかり戻ったとこに旅館が有るけど、あそこはこの時間にはやってねぇだろうし、と言うと終点のほうで良いと言うんでね、乗して走り出して話を聞いたら、西の方の終点のそばに住んでるらしい。逆方向の電車に乗ったと言っていたが、よくよく聞いてみるってぇと、どうも西向きの電車に乗ってそのまま寝ちまって折り返してきたようだったね。
そんなら始めっからそう言やぁいいのにっていってやったんだよ。だってね、乗せたとこから東の終点まで行きゃぁ1500円だよ。で、ホテルに泊まりゃぁいくらビジネスでも、安いとこで5〜6000円だろ?その西の終点まで走っても6000円も掛からなかったのにって言ってやったら、5000円で行ってもらえますかってんだ。
そりゃぁ乗ったとこからならそんなもんで行けるだろうって距離だったからね。気の毒だったしその方が客のためだろうって思って東へ向いて走った分の往復分はサービスしてやるかって気になったわけだ。乗ったとこの前を通過したときには既に2000円を超えてたんで、損したなぁって思ったよ。だけどまだ若い奴だしってね、あたしの若かったころの事を思い出しながら行ってやったわけだ。ところがついたらね、ごく普通に停まったのに、自分から運転席のバックレストに頭をこすり付けといてね、「痛ぇ、痛ぇ」って始めやがった。その前には信号の変わり鼻にもうちょっと急な停まり方をしても平気だったのにね。あたしも「又かよ」って思ったよ。上の話の次の客だからね。「ま〜た、薩摩守か」ってね。で、あたしもとぼけてね、知らん顔で日報を書こうか釣銭の用意をしようかってな顔で、無視してたら諦めたみたいに今度は、散々時間をかけてかばんのあっちこっちをまさぐってる振りをしていたね。もし金が無いなんて言ったときのことを考えて、最寄の交番か警察署はどこだっけなんてあたまの中はフル回転だったけどね。しばらくしたら「あった、あった」なんて言いながらやっと
1000円札を4枚出してね。「あれ、4千円しか無いや」。『ふざけるなよ、タクシーに乗ってビジネスホテルに泊まるつもりだった奴が4000円しかないわけ無いだろ』って腹の中で思いながら、そのまんま手のひらを上に向けて待ってたら、次に渋々と小銭入れを引っ張り出して、やっと100円玉を5枚引っ張り出して「これっきゃぁないや」。
そこであたしもやっとね、「5000円で行ってもらえますか」って言い出したのはあんただよ。ビジネスホテルに泊まるだけでも5000円や6000円じゃぁ無理だよ。クレジットカードくらい持ってないのって言ってやったんだが、ビジネスホテルで5000円も掛かるか、クレジットカードで500円ばっか切るのはいやだなんてぬかしやがってね。さらに降りていくときの捨て台詞には頭にきたねぇ。どうせメーターは途中で止めたんじゃぁねぇか、だと。あたしゃねぇ、あんたの言葉を信じて5010円までは回してたんだよ。じゃぁ最後までメーター回しっぱなしだったら全額払ってくれたのかい? って聞きたくなるね。完全に7000円オーバーだよ? ま、名古屋で裏切られるのはまだあたしが名古屋人になりきれていない証拠みたいなもんだけどね。で、最近では如何に裏切られないように言質を取るかに苦心しているがね。
法人のタクシー会社に勤めていたころはこんなときにはすぐに警察に引っ張っていったのになぁなんて思いながらも、やっぱ歳なのかねぇ、糞野郎なんて思いながらもしょうがないかなんて諦めちまうのはやっぱ歳と言うだけではなく、個人タクシーと言う弱い立場のせいなんだろうかなんて考えちまう。
上の、「曜日で運賃が変わる?」の若い男の言い方は、まるで運転手が金曜日だと足元を見て高く吹っかけてるような言いかたをしていたんだが、別にこっちはそんな気は無いよ。只メーター通りの運賃がもらえればそれで十分なんだよ。本当ならね。で、閑な日は逆に吹っかけたいくらいだ。値引きは違法だけど、余分に貰えるってんならそれを断らなくったってそれは違法でもなんでも無いしね。足元を見て値切るなんて汚ねぇまねをしてるのはしみったれのテメェラの方じゃぁねぇかって怒鳴りつけてやりてぇなぁ。それと、貧乏なら酒なんか飲むなよって言ってやりてぇよ。