見えねぇんだってば


読心術師?

00/07/28

あたしがいつもの駅でいつものように仕事をしてたわけだ。駅の中から見覚えのある顔が出てきたんだよ。この人は今までにも何回かのせたこたぁあるし、今の時間は「ちょっと買い物をしてくる」なんてぇ時間でもねぇし。つまり、寄り道せずに直接タクシーに乗ってくるだろうと思ったわけだ。で、合図される前にドアを開けたんだよ。ま、とりあえず20センチくらいかね。するってぇとびっくりした顔であたしの顔を見ながら乗ってきたんだが、
「どうして、私がタクシーに乗るって分かったんですか?」って聞くんだな。
「今までにも何度か乗ってもらってましたからね」って説明しても不思議そうにあたしを見るんだね。
「今までにお宅の車に乗った覚えがないんですけど」なんて言いながら、不思議そうって言うより、気持ち悪いって感じに近い顔をしてるんだ。

もしかするってぇと、超能力者か霊能者か、それともテレパシーでも使えるんじゃぁないかって疑われたみたいでね。だけどねぇ、もしあたしに人の心を読む力があるんだったら、占い師とかもっと儲かる仕事をしてるよって言いたかったね。それにさ、もし本当にそんな能力があるんだったら、それを悟られないように合図があるまでドアも開けずに知らん顔してるよなぁ。だって、あの運転手は人の心を読むらしいよなんて噂が立ってしまったら、誰も気持ち悪がって乗ってくんなくなっちまうだろ?

しかし、人の気持ちが分かるってぇのは嫌だろうねぇ。腹ん中ではあたしのことを罵りながら、表面的ににこにこしてる奴とまともには顔を合わせらんなくなんだろうしね。だけど、そんな能力があるんなら博打うちにでもなれば儲かるんだろうか。相場師とかね。


とんぼじゃぁねぇんだよ

98/12/27

あたしら運転手ってのは、常に前を見てる訳だ。停まってる時だっておんなじだよ。で、あたしが良く行く地下鉄の駅のタクシー乗り場に居る時だってそうだ。この駅のタクシー乗り場の場合、駅の出口が目の前にあるんで、降りてくる人を常に見てるってぇ訳だな。ところがこの駅から降りてきてタクシーに乗ろうってぇ奴が合図をしねぇ。それどころか、目が合った途端に俺はのらねぇんだってな顔してそっぽぉ向いちまう奴も居る。例えばあたしが2台目に居る時なんかは良く分かるんだが、そっぽを向いて歩いてきてドアの横まで来るってぇとドアに向かって、たぁだ突っ立ってるだけだ。だからその車の運転手は気が付かねぇ。面白ぇもんだからただ黙って見てるってぇと、痺れを切らした客が歩道の上から、車内を覗き込むように窮屈そうな格好でかがみ込んで、窓をカンカンなんて叩き出す。で、その運転手ははっと気づいてドアを開けるってぇ訳なんだな。

運転手は前から歩いてくる人に注意が行っちまってるから、横や後ろで合図したって分かる訳がねぇんだがその辺の分かっていねぇ奴の多いこと。とんぼじゃぁ有るめぇし横や後ろが見えるかってんだ。ある時やはり同じように合図もしねぇで横に突っ立ったままの客を乗せたんで前から来たのを承知でわざと聞いてやった事がある。

「御客さん後ろから来たんですか」
「いや、俺は前からきたよ」
「え? あたしは前から来る人はずっと見てましたがねぇ。合図をしなかったんですね?」
「何言ってるんだ。ここはタクシー乗り場なんだろ。合図なんかしなくったって横に立ったらドアを開けりゃぁ良いじゃないか」
「だって御客さん。ここは道路ですよ。歩道を歩いていく人が皆タクシーに乗ってくれるんなら人が通るたびに開けますがねぇ。だけど乗る気も無いのに目の前でドアを開けられた人にとっては気分悪いでしょうねぇ。それにずっと後ろばかり見ていたら、ちゃんと前から合図をしながら歩いてきた人の合図を見逃しちまうでしょ?」

これでたいていの奴ぁ、むっとして黙っちまうな。タクシーに乗り慣れてるか乗り慣れてねぇかってのは此の辺で分かるねぇ。特に乗ってやってるんだってぇ連中は偉そうに突っ立ったままで待ってやがる。こういう奴には知ってても知らん顔だ。慣れた人は前から来ながら、一寸手を挙げたり、うなずいたり。それだけでいいんだよ。女の人なんか手がふさがってる時なんざ一寸会釈してね。こういうのは結構優雅ってぇか、上品ってぇか良い女にみえるってぇもんだ。こうやって合図されれば、あたしらだって、まず合図を認めたってぇ印にドアを10センチ位開いて、後ろに回り込んだところで、さっと開いてやるってぇもんだ。こうすりゃぁ待たずにさっと乗れるってぇもんだろ? 何も開くのをじっと待って無くったって、無理にかがみ込んだりしなくったって済むじゃぁねか。ま、こういった連中でもたまにはちゃんと合図しながら走ってくることもある。雨の時とか、北風の冷たい時とかね。

そういやぁ、最近もっとややこしい事情があるんだった。ママタクだかパパタクだか知らねぇが家族に迎えに来させる奴等が増えてねぇ。そう言った連中がタクシーの横で待ってたりすることも有るもんだから、横に居るのが乗る客とは限らなくなってきたんだなぁ。しかし、こういった連中はひでぇもんだ。前の信号が青でも後ろの車を待たしといて、へぇきで乗り降りしやがる。名古屋の渋滞の殆どはこういった周りへの迷惑を考えていねぇ奴等のせいだな。駐車禁止の場所で駐車するために、後ろの車を待たしたまんま切り返ししてたり、一方通行を逆行して対向車と擦れ違うのに難儀してたり・・・


あんたは忍者か?

98/12/22

世の中頭のわりぃ奴が結構多い。昔、冬のさなか、そうだなちょうど今くらいの季節か。年末の忘年会シーズンだったと思うんだが、夜中に女が第二車線まで出てきて両手を広げて通せんぼしてやがる。ドアを開けて乗してから「危ねぇじゃねぇか」って文句を言ったらその女が言うには
「手を上げても誰も停まってくれないんだから、ああするよりしかたないでしょ」ってんだね。

そりゃぁ誰も気がつかねぇよ。黒いコートに黒いストッキング、黒い手袋をはめてりゃぁ忍者じゃぁねぇか。夜、人目につかねぇ様に黒ずくめにしてる忍者とおんなじ格好でタクシーを止めようってんだから土台無理な話だ。

で、良い事を教えてやるってんでね、「そのかっこでタクシーを停めたけりゃぁ、白いハンカチをいつも持って歩いて、それを振るこったね」って言ってやったよ。

しかし、車に乗った事の無いやつかねぇ。自分からは見えていても相手から自分が見えてるかどうか。その辺が分かっていねぇんだなぁ。車のライトの届く範囲なんてのは狭いんだがねぇ。夜、横断歩道でもないところを横断してて跳ねられるってのも、これとおんなじなんだね。


物陰から合図するなよ

98/12/22

名古屋ってぇとこには運河が何本か流れてる。この近くは大抵工場とか倉庫とかになってる。だからってぇ訳じゃぁあるめぇが、その辺の通りは中心部に比べりゃぁ、街灯が少なめで夜になるってぇと、少々暗い感じがする訳なんだな。で、車道と歩道の境には街路樹や腰位の高さの植込みなんかがあるもんだから、歩道を人が歩いてたって見えねぇことも多い。そんな所で、夜の10時頃、街路樹の陰から手をあげられたことがある。

暗い上に街路樹の陰からだったもんだから、発見が遅れて通り過ぎてから停まった。するってぇと走ってきて車に乗るなり
「あたしはいつもタクシーを利用してるけど、あんたみたいに通り過ぎてから停まった運転手は初めてだ」

で、あたしは親切に教えてやったんだがね。街路樹の下はそれで無くったって暗いんだから、もっと明るいところで、しかも物陰にならないところを選んで立ってないと見つけてもらえませんよってね。

するってぇとその人は又怒り出した。「あんたみたいに客を捕まえて説教する運転手は初めてだ」って。説教じゃねぇんだってば。


逆光じゃぁ見えねぇんだよ

98/12/22

バス停の看板とか自販機の前ってのは一晩中明るい。で、そう言った明るいところの前に立ってる奴ってぇのはシルエットになっちまうから黒い固まりになっちまって、こっちを向いてるのかさえも分からねぇ事が多い。やっぱ夜の話しなんだが、そういうバス停とか自販機の前を通り過ぎて次の信号で止まったときのことなんだが、追っかけてきた奴に車を蹴飛ばされたことがある。

手ぇ挙げてんのに何で停まらねぇんだって怒ってやがる。冗談じゃねぇ。後光が差しててみえねぇんだからしょうがねぇだろ。これと逆のこともある。例えばそう言った明るいものの向こう側にいる奴はやっぱ見えねぇんだよ。マスキングってぇ奴だな。昔の刑事もんの映画とかテレビドラマでよく出てきた光景なんだが、取り調べのとき容疑者に白熱球のスタンドを向けておくってぇのも同じ事で、それで刑事や取調官の顔が見えねぇ様にしていたってぇ訳だ。。


傘を使えよ

98/12/22

雨降りのときってぇのは昼でもあんまり明るくはねぇんだよ。で、そんな時に傘を差してるってぇと顔の表情なんてのは見えねぇ。そんな状態で、女の子が良くやる「又ねぇ」とか「ばいばーい」なんて時の胸の前で手を小さく左右に振る動作をしてたって走ってる車から見えるかってんだ。濡れたくないからってんで手を外へだしたくねぇってのは分かるよ。だけど合図ってのは相手に見てもらえなかったら合図たぁ言えねぇだろ?

雨に濡れずに相手に分かりやすい合図をしなけりゃぁならねぇってぇ時にゃぁどうするか。傘という立派な道具があるんだから、簡単なことじゃぁねぇか。持ってる傘を上下に振りゃぁいいんだから。そうすりゃぁ濡れることもねぇし、走ってる車の中からでもよく分かるってぇもんだ。