ゲイシャ


ゲイシャってのは「芸者」じゃぁ無くってね、「迎車」のことだ。名古屋では、普通の距離・時間運賃の他に「お迎え」料金てのがある。大都会から来た奴の中には「なんだこれは?」なんて驚いてる奴がいる。なぜかって、大都会では「お迎え料金」なんてのが無いからなんだな。いや、実際にはないんじゃぁなくってメーターに別個に表示されないってだけのことなんだが・・・。つまりね、無線で指示を受けて「じゃぁこれから向かいます」って段階でメーターを入れちまうからなんだよ。だからひでぇときなんか、お迎えに来た車が着いて、すぐに乗ったのに走り出した途端にメーターが上がるなんてことが有るくれぇのもんだ。


誰が呼んだんだ

00/07/23

迎えに行ってみるってぇと、乗ってくる本人がグダグダと文句を言ってることがある。話を聞いてみるってぇと、結構面白い裏話が見えてくるもんだ。

「ここのママは不親切だ。知り合いの子が新しく店を出したんでね、帰りにちょっと寄ってこうと思ったんだけど、住所はこの辺なんで場所を教えてくれと聞いたらさ、タクシーを呼んでやるからそれに連れてってもらえって言うんだよ。 で、○○ビルって遠いの?」
このビルは、一方通行なんでぐるっと一回り回るけど、逆行する気になれば百数十メートル位のとこだったんだよね。

「いやぁ、運転手さん申し訳無い。何時もあの店を利用すると帰りにはタクシーを呼ぶことにしてるもんだから、店のママさんが気を利かせてくれたんだろうなぁ。だけどね、今日は実を言うともう一軒寄ってくつもりだったんで、歩いていこうと思ってたんだよ。しかし呼んでくれた以上、乗らないと変に勘ぐられかねないし・・・」
で、この時の行き先は次の角を曲がって、見送りの人から見えなくなるところまで。

「ねぇ、運ちゃん。俺って酔ってる様に見えるかい? 俺んとこの部下がね、もうこれ以上飲んだら危ないから帰れってんだよ。おまけに知らねぇ間に車を呼んでやがってね。タクシーが来ましたからどうぞお帰り下さいだなんてぬかしやがって。ウィ〜、ヒック
あいつは、×子チャンに惚れてるもんだから、俺が邪魔だったんだなぁ」

「あそこのママはひでぇもんだ。俺のことを追い出しやがった。俺はねぇ、タクシーを頼んだ覚えは無いんだよ。今日は結構あの店も忙しくってね。後から後から来る客がチラッと覗いちゃ、座るとこがないからって帰っていくだろ?するとね、あそこのママ、俺のほうをチラッと睨むんだ。そりゃぁ、一人でボックスを一つ占領してて、俺だって少しは気にしてたんだけどね。だけど俺はあそこの常連だよ。何時も結構金遣ってるんだから。それを知らねぇ内にタクシーを呼んどいてさ、お迎えが来ましたからどうぞ気をつけてお帰り下さいだと・・」


もう来たのか

00/07/23

「なに〜〜、もう来ちゃったのかよ。いいよいいよ待たしとけ。あ、運ちゃんわりぃな。今カラオケ頼んだばっかなんだけど、4〜5人先になんだよ」

「おぉ、来たか、来たか。運転手さんもこっちへ来て・・。あ、その前にメーターを入れてきてよ。
で、ま、そこに座んなさい。運転手さんにアルコールを勧める訳には行かないから、ジュースを出してやって。それからこっちにはビールと、熱燗2本」

この二つの例はね、どっちも十数年前のバブルの頃のお話でね。忘年会シーズンのことなんだけど、寒い深夜に人があふれかえっていた頃の話なんだ。言い方は悪いが、お客さんなんかは選り取りみどり。別の言い方をすりゃぁ、「入れ食い」状態だったんだ。いくらメーターを入れて、待ちを掛けても割に合わないんだよ。それよりね、寒空の下で、震えながらタクシーを待ってる人がいるってのに自分の帰りの足を確保しておこうってぇその魂胆が気に入らなかったんで、あたしも「また後で呼んでください」ってんでそこを離れたけどね。

「えぇ〜〜? もう来ちゃたの? まだコートを脱いで、席についたばっかだよ。頼んでから2時間は掛かるって話じゃぁ無かった? だから、店に入ったらすぐに頼んでおいた方がいいっていってなかった? え? それって東京の話だったのかぁ。帰ってもらってよ。又後で頼むから。なんだよ〜お迎えと運賃を払うの? まだ乗ってもいないのに? 冗談じゃぁ無いよ」

キャンセルの場合、タクシー会社経由でキャンセルする場合を除いて、お客からキャンセル料として、お迎え料金と初乗り運賃を頂くように会社から指示されてはいたんだが、このときにそれを請求したのはママさんだったんだ。これは、店の信用と言うことも有るんだが、運転手の間で悪い評判が立つと、お迎えを頼んでも次から来てもらえなくなると言う心配があるかららしいんだな。


業務妨害

00/07/23

新聞で読んだんだけど、ひでぇ悪戯をする奴がいたもんだ。女の恨みは怖いってね。ある主婦が、仲の良かった別の主婦の名を語って、仕出し弁当を頼んだり、ピザを頼んだりしたらしいんだね。昔から寿司を頼んだり、蕎麦やラーメンを頼んだりってぇ話しは聞いたこたぁあったんだが、今度の奴は度が過ぎてる。葬儀屋三軒に祭壇をもって来させたり、引越しの見積もり屋を呼んだりしたってんだ。で、この悪戯をした主婦は偽計業務妨害とか言う罪になるんだそうだ。

あたしも以前これと似た被害に遭ってるんだが、会社は何もしなかったんじゃぁ無かったかな。どこの誰の仕業かもわかんなかったしでね。

その話ってのはね、
あたしが走ってたとこの近くを無線が呼び出してたんだ。これが、今走ってる道と平行してる川の反対側でね。う〜ん、次の橋を渡ってちょっと戻るだけだからそんなに時間もかからねぇだろうってんで、応答したわけだ。で、指示された高層住宅の前に車を停めて、エレベーターで目的の部屋へ連絡にいったんだが、インターホンでの返事がどうも変だ。「はぁ? は〜」って感じでね。で、あたしはてっきり頼んだ人とは違う、別の人が応対してるんだと思いこんじまったわけだ。ま、来たことを伝えたんだから下で待っていればいいだろうってんで下へ降りて車の脇で待ってたんだよ。

下へ降りて間もなく、今度は別の会社のタクシーが飛んできてね、やっぱりエレベーターで上へ上がっていったんだ。へぇ〜、ここの住民は結構タクシーを利用してんだなぁなんて思いながら、その上がっていった運転手が、廊下を歩いていくのを見上げてたらね、あたしの呼ばれたお客とおんなじ階なんだな。で、止まった所は同じ部屋の前。

見てると、今度はちゃんと部屋の住人が出て応対してるんだ。いったい何を話してんのか、ちょっと時間が掛かるねぇと思ってたら、今度は小型の個人タクシーが来た。念の為に聞いてみると、やっぱり同じ客らしい。しかも小型を指定してきたんだが、近くに小型がいなかったもんだから、ちょっと遠かったけど自分が走ってきたんだと言うんだ。で、やっぱり連絡しに上へあがっていった。

入れ替わりで降りてきた2台目のタクシーの運転手に聞いてみると、「さっきもタクシーが来たみたいだけど、うちでは頼んでいない」と言われたらしい。そこへ又別のタクシーが来てね、聞いてみると同じ客なんだよ。行っても無駄かもしれないが、とりあえず連絡して来るといって上がっていったんだが、やはり、頼んでないと言われて降りてきたね。全部で6台くらい来たかねぇ。で、運転手同士で話してね、どうも悪戯されたみたいだなと言う結論になった。その部屋の住人が悪戯をしたのか、誰かがその部屋の住人の名を語った悪戯かは分かん無かったんだが、こんなとこにいてもしょうがねぇんで帰るかってことになってね、車に乗って走り出そうとしたら、又1台タクシーが来たんだよ。その客の名前を言って、そこに行くんだろ?と聞いたら驚いてねぇ。どうして知ってんだって言うから、事情を説明したんだが、念の為に連絡に行くと言って上がっていったよ。あたし等が帰った後にももしかしたら何台か呼ばれて来てたかも知れねぇんだが、それ以上のこたぁわからねぇ。

会社へ帰って、仲間にその話をしたらね、一斉に全部のタクシー会社に電話をして、どこのタクシーが一番早いか賭けをしたんじゃぁ無いかなんて冗談を言ってる奴もいたね。てこたぁ、あたしのいた会社に賭けてた奴がもうかったってわけだ。