もしかして名古屋の人は予めってぇ言葉を知らねぇんじゃぁねぇんだろうか。読み方も知らねぇかもしれねぇな。「あらかじめ」ってんだが、「前もって」ってな意味だよな。ま、確かに御客さんは神様だってんで人間みたいに思いやりだの配慮だのするこたぁねぇんだが。自分のためでもあるんだよ。
99/02/07
「予め」ってぇ言葉を知らないくせに、変な時だけは余計なことを「予め」言いやがる。
タクシー乗り場に居るとドアのところへ来ずに、助手席の窓から覗き込む奴が居る。なんだろうってんで見てると窓を下げろと合図をしやがる。あたしの車はねぇ、自慢じゃぁないが只のデラックスなんだよ。スーパーがつかねぇと助手席の窓まで電動にはならねぇんだ。しょうがねぇから後ろのドアを開けるってぇと、ドアと柱の隙間に口をとんがらかしてしゃべってきやがる。
「運転手さん、申し訳ない。近いんだけど良いでしょうか」
「どうぞ」
(んなこと言ってる間にさっさとのれよ。
あぁ、見ろ。信号が赤になっちまったじゃぁねぇか)
「どちらへ?」
「あのぉ、とても近いんですけど」
(それはさっきも聞いたよ。一体どこへ行きゃぁいいんだ?)
「あのぉ、××までお願いしたいんですけどよろしいでしょうか」
「あいよ」
(さっきも良いって言っただろう?)
さっさと乗ってくる奴でも中々行先を言わねぇ奴が居る。
「運ちゃん、悪い! 近いんだ。いいよな」とか
「近くて申し訳ないんですがぁぁ」とかね。
んなこたぁ分かってるからさっさと行先を言えってんだ。ここの信号は特に短けぇんだから。
こういったやつらは、あたしらにとって非常ーーーーにあったまくんだよなぁ。近いのが頭に来るってんじゃぁねぇんだ。だって地下鉄の駅から出てくる客ってのは目的地の近くの駅まで来てる訳だろう? だからあたしらだって遠くへ行く客なんてのは、まず居ないと思って仕事してるからね。近いからって断ってた日にゃぁ、一日のうちに何回仕事が出来るかってんだ。近い客が嫌だったら始めっからこんなとこで客待ちするかいってんだ。
で、時にはあたしも嫌みを言ってやることもある。
「あたしはそんなに人相が悪いですかい」
(確かに良くはねぇんだが・・)
「近い客を断る雲助みたいに見えたんですかい?」
(って、あたしゃ雲助だけどね)
「御客さんも嫌みだねぇ。あたしらが断れねぇ事知っててあんなことぉ
言うんだからねぇ。 まるで『断れるかい? 断れねぇだろ』って
言ってるみたいだよ」
で、最後に頭に来るのは、こういった奴等に限って降りる時んなってから財布を捜したり、大きい札を出したり、領収書をくれとかいったり。 近くても文句はいわねぇが、近くて申し訳ないって本気で思ってるんなら、もっとこういった所に気を遣えってんだ。さっきの言葉は何だったんだ。只の社交辞令かって言いたくなるね。最初から「近くて悪いんだけど」なんて言われていなきゃぁこんなことで一々頭に来たりもしねぇってもんだ。
98/12/29
飲み屋のある小路から飛び出してきた奴が必死になって手を振ってやがる。乗して行先を聞いたら駅だってんだが、最終が○○時××分だから急いで頼むってやがる。
スケベ根性だして、ぎりぎりまで遊んでやがったな、なんて思いながら走り出した。一番空いてる道を選んで走ってやったらちゃんと指定の時間までには付いたんだが、それからが大変だ。あっちこっちのポケットをまさぐって財布を捜してやがる。やっと引っ張り出したと思ったら、今度は財布の中をあぁでもねぇ、こぅでもねぇって引っ掻き回した挙げ句、終いに1万円札をさっと出しやがったね。
1万円札を出すときは、乗る前に言えってんだ。前に乗った客があんたみたいな奴で、用意していた釣り銭が既に無くなってることだってあるんだから。着いてから小銭が有りません。なんてんじゃ、それからどこかへ両替に行かなきゃぁなんねぇじゃぁねぇか。そのうちに終電は行っちまうよ。滅多にタクシーに乗らねぇ奴はそんな常識も知らねぇときてやがる。
98/12/29
最近では領収証発行器なんてのを備えた車が増えてきた。要はレシートをガチャガチャと打ち出す機械なんだが、大抵は法人タクシーで、個人タクシーで備えている奴はまだ少ない。つまり手書きだから着いてさっと出せるってぇ訳じゃぁねぇんだが、それでも着いてから言う奴が結構多い。
これも上の話しの続きなんだが、バラバラの千円札を一枚一枚勘定して、揃えて、やっと釣り銭を渡したと思ったら、今度は領収証をくれってんだ。あたしだってね、「予め」名前を書いて印を押しておくんだが、時にはさっきの客でそれが終わってたなんて事もある。で、たまたまこの時がそうで、日付、金額、それに名前を書いて印を押していると手を突き出して早くしろって怒ってやがる。
そんなこたぁ乗ったときに言えってんだよ。そう言うと客は偉そうに「ほう! 運転手さんは着く前に料金が分かるんですか」なんて馬鹿なことを言い出す。予め分かっていりゃぁ日付と名前を書いて判を押しておけるだろう。そうすりゃぁ着いた時に、金額を入れるだけで済むじゃぁねぇか。途中で信号で停まってる間にいくらでも準備できるってぇもんだ。それに、この客の場合なんか、財布を捜す時間、中を引っ掻き回す時間が結構長かったから、着いた時に言われても十分余裕はあったんだがね。
此の辺のこたぁ乗りなれた人は上手だよ。行先を上手に説明した後、「あ、それから降りる時に領収証を下さい」ってな具合にね。
しかしこういうもたもたした客ってのが前の車に乗ってる時ってのは、結構後ろの車には恩恵があったりするもんだ。ある駅の前で客を降ろした時のこと、こちらの客はチケットを放り出しながら、書いといてくれと言って駅へ飛び込んじまったんだが、前の車は先に着いていたのにまだ客が降りようとしねぇ。多分上で書いたような客だったのだろうねぇ。すると、その車が空くのをドアの横で待ってた別の客ってのが、あたしの車の方へ走ってきて乗ってくれたんだが、これが名古屋で乗せる客としちゃぁ結構遠い方でね。
さてと上で書いた客の場合、時間ぎりぎりまで飲んでいたのがそもそも間違い。で、乗る前に小銭があるかどうか確認しなかったのが第二の間違い。乗ってからでもすぐに財布の中を確認して1万円札しかないことを告げていれば、あたしだってそれに対するお釣りを走りながらでも揃えられたのにそれをしなかったのが第三の間違い。乗ったときに領収証を欲しいといってりゃぁ仮に用意してあったものが無くなっていても信号待ちの間に準備できたのに着いてから言ったのが第四の間違い。ところで、この客は必死に走ってったけど、終電に間に合ったろうかねぇ。
99/02/07
最近じゃぁ、五年一昔ってぇらしいから、二昔も前の話しだな。
名古屋の中心部で、ガイジンが手を挙げていた。この当時はガイジンを外国人と言わなきゃぁならねぇなんてな事は未だそううるさく言われてなかった頃だったんで、『うぇ、ガイジンかよ』って腹ん中で思った訳だ。いや、別にガイジンが嫌だってぇ訳じゃぁねぇんだが、なんつったって言葉が通じるんだろうかってぇ不安があったって訳だ。多分欧米系だろうとは思ったんだが、ガッコで習った英語なんてのはすっかり忘れちまってるし、第一英語が通じる相手かどうかもわからねぇ。
取りあえず停まってドアを開けてみたんだが、行先は「新幹線」だってんだね。それも変なアクセントとかなまりはあるにしても割にハッキリ分かる言い方だったんで、一安心だったんだが。これが降りる時に「レシートを下さい」ってんで考えちまった。で『あ、領収書のことか』とすぐに思い浮かんだんだが、日付と料金を書いた後、念のために「お名前は」ときいたら「ウエ」だと。
変わった名前だねぇ、ってんで「ウエ」と書きそうになっったんだが、待てよと思ってもう一度念を押して「ウエですか?」と聞いてみたら「ソデス。ウエサマデス」だと。それで「あぁ、上様のことか」とわかった訳なんだが、驚いたねぇ。ガイジンが「上様」なんて知ってんのかよってんでね。
99/01/03
さて、上の方でも書いたんだが、釣り銭について補足しておかなきゃぁなるめぇ。
あたしがこの業界に入ったのはもう14年くらい前のことなんだが、この当時、初乗り運賃は中型で460円だったかな。名古屋最大手の会社に入った訳なんだが、ここで、最初にお勉強した中で、釣り銭に付いてどういった具合で用意すればいいかってなことも教わった訳だ。
まず、朝1万円札一枚もって来いってんだ。それを会社のカウンターのところで千円札に替えてもらったら、両替機で4千円を100円硬貨に替えて、残りを50円硬貨10枚、10円硬貨50枚に替えろってんだ。それ以上は必要無い。後は客の責任だという訳だ。つまり、5千円以下の運賃は客の責任で用意しろってこったな。大体、運賃の倍以上の額の札を出すなってんだね。だから客にこういった常識があればこれで十分な訳なんだが、常識外れの客が乗って来ればこうははいかねぇ。
名古屋では、普段タクシーに乗らねぇもんだからなにが常識かが分かってねぇ客ってのが結構多くて
「釣り銭を用意するのは運転手の責任だろう。そんなもん常識じゃねぇか」
なんて偉そうに威張ってる奴が割に多い。ひでぇ奴になると2人乗ってて降りる時に1人が千円札を出しているってのにそれをひっこめさせて、1万円札を出す奴が居る。こちらが「千円札の方で下さい」ってぇと「なんだ釣りがねぇのか、今日は稼ぎが悪いのか!?」だと。大きなお世話だ。中には接待する側が1万円札を出したりしてね。「あいにくさっきの客で細かいのを出しちまったもんで」なんて言いながら(実際には細かいのがあるのに)一万円札をひらひらして見せるてぇと接待された側が千円札を出してたりしてね。接待する立場としてはいろいろ準備しておかなくっちゃぁいけねぇんだよ。こういった奴に限って着いてから領収証をくれとかね。しかし、誰も、何もおせぇねぇのかねぇ。これでちったぁ勉強になったろう。
個人タクシーは当然のことだが、法人タクシーでも釣り銭は運転手個人のものだからそんなに用意できるものでもねぇんだが。例えば10人の客が連続して千円以下の運賃に1万円札を出すことを想定したとするってぇと、常に9万円分の釣りを用意してなくっちゃぁなんねぇ。この不景気な時期には、それで無くったって手元に置く現金を少なくしたい時なんだから、売り上げ以外に釣り銭を大量に持ち歩くなんて恐くってできるかってんだ。
しかし、余所から仕事で来る人とか、転勤で名古屋へやってきた人なんかはやっぱ違うねぇ。あたしは名古屋の東の外れの方にある駅で仕事をすることが多いんだが、新幹線で来て、名古屋駅から地下鉄に乗り名古屋インター近くの駅からタクシーで豊田市へ行く客ってのがたまにある(以前は多かったんだが・・・)。これが大体6千円以上の運賃になるんだが、高速料金の550円を含めてきっちりか、数百円のお釣りで済むような払方をしてくれるんだな。
ある転勤族の奥さんだったんだが、着いた途端に「あら、御免なさーい。細かいのが無かったわ」。あたしゃドキっとしたんだが、出されたのが千円札だったんで又びっくり。名古屋の人は600円の運賃に千円札を出すのは当たり前くらいに考えてっから、870円に千円札を出すのに恐縮してるこの奥さんを見て、やはり土地柄かなぁなんて思ったねぇ。
98/12/29
忘年会のシーズンも終わったんだが、この時期と、歓送迎会の時期に多いのがこの手なんだな。繁華街の狭い通りで停められると後ろの車は待たざるを得ないってのは別のページの違法駐車の写真を見りゃぁ分かると思うが、その狭い通りで10人位のグループが手を挙げてたりすると、「又か・・」ってな気になる。後ろの車がクラクションを鳴らして早く行けってうるせぇんだよなぁ。
こういった連中はタクシーを停めてからおもむろに「どっち方面が先に乗る?」とか「東方面は誰と誰だ?」とか。やっと方面別に乗るメンバーが決まったと思ったら、終いにゃぁ「誰が一番遠いの?」「誰が先に乗るの」「誰が一番先に降りるの?」
そんなこたぁタクシーを止める前に決めとけよ。この寒いのに前のドアも後ろのドアも開けっ放しで、せっかくあったまってた車内が冷えちまうじゃぁねぇか。順番なんかどうでもいいからさっさと乗れよって言いたくなるね。で、おまけに「運転手さんこの車ってヒーター効かないんですか? もっと効かして下さい」だと。さっきまではのぼせるくらい効いてたんだがね。
こういった事は、年中麻雀をやってる仲間なんてのは上手に乗るね。やっぱ、慣れなんだろうねぇ。