00/02/08
仏間1:仏間2
| 輪廻ってぇ考え方がある。どんなんかってぇとだな、肉体が死んじまってもその魂はまた別の肉体に宿って生まれ代わるってんだな。 面白い話がある。催眠術の本なんかによく書かれているんだが、人の前世に遡ってみようてんで色んな奴が色んな事をしてるんだね。まず催眠術に掛けといてね、年を順に減らしていく(これをね、年齢逆行ってぇらしい)と赤ん坊になる訳だ。この辺のこたぁ今でもトラウマ探しに使う技術らしい。幼児期に体験した何かを探すことで、今抱えてる問題点の原因を探ろうって訳だな。で、そこからさらに遡るってぇと今度 |
★ | は生まれる前の状態になり、さらに遡ると、それ以前に生きていた別の人格になるというわけだ。ま、一気に赤ん坊に遡ってしまうわけではなくってね、今日は5年遡って、明日は10年遡ってってな具合に少しづつ遡るらしいんだが、生まれる前の闇の中を遡ってそれ以前の人格になると、言葉や態度まですっかり変わっちまうらしい。 あたしがこういった本を読んだのはもう35年くらい前のことかねぇ。未だ高校生だったかな。親父の本棚に入ってる本をこっそり引っ張り出しちゃぁガッコで授業中、夢中になって読んでいた頃の話だ。 |
| アメリカでの話だが、若い娘に催眠術を掛けてね、少しづつ遡って日本でいやぁ中学校時代、小学校時代ってな具合に遡りながらその周囲の状況や、何をしてるかなんてことを聞いてみる訳だ。すると、言葉もその当時の言葉に代わり、誰とどんなことをして遊んでいるかなんてことを細かに喋るってんだね。立ち会ってる親に聞いてみると確かにあったことらしい。で、さらに遡って前世と現世の間になるとこれも段階があるらしい。生まれる直前、その前、そして前世で死んだ直後と、それぞれの状態が異なるってんだ。今何をしてるかと聞かれて、箱の中に横たわってる、とこの女性は答えたね。国は?と聞かれて、エジプトだ | ★ | と答えたこの女性、エジプトの本なんか読めないし、エジプトにも行ったこたぁねぇってんだな。それなのに、現地の言葉で喋ってみろと言われると英語で喋るよりも流暢に喋ったというんだ。ところが、アラビア語の話せる人と喋り始めたときには嬉しそうに喋っていたのに時々話が通じないというんだよ。いろいろ調べてみると古代の言葉が混じってるらしいんだね。この女性の前世は古代のエジプト王の娘だったんだが、寝室の見張りをしてる男が好きで、抱き合ってるところへ夫が帰ってきたんで、その男が槍でその夫を殺したもんだから、その死んだ夫と共に生きたまんまピラミッドに埋葬されるとこだってんだ。 |
| もうひとつの話は、やはりアメリカ人なんだが、これが前世はフランスの漁師だったてんだね。それもルイ13世の時代だと。死んだのは喧嘩のせいで、短刀で刺されたからだってんだ。死んでる自分を見下ろしてるってんだから驚いちまう。 で、この二人とも今現在のその土地へも行ったことがないのに、ましてや数百年、数千年も前のその土地の事なんか知るはずも |
★ | ない訳だよ。それなのにまるで今、目の前にあるかのように明快に質問に答えるってんだから、多分芝居なんかじゃぁねぇんだろうな。しかし惜しかったねぇ、このエジプトのお姫様、読み書きができねぇってんだ。読み書きは僧侶の仕事だってんだね。読み書きができりゃぁ古代の石板なんかに書かれてる奴で、判読できないような奴を読んでもらえたかも知れねぇってのに。 |
| この前世の話ってのがだよ、芝居なんかじゃぁなくって本当のことだとすりゃぁ、輪廻ってのは実際にあることなんじゃぁねぇのか?って気になってくるだろ? ところでさ、この二人みたいに生れ変わるまでの間が数百年、数千年もあるってのはなぜなんだろう。それよりも、その間いっ |
★ | てぇ何してやがったんだ?って思っちまう。前世の記憶を消すのに時間が掛かるからかい? だけど、こうやって催眠術を掛けられると簡単に思い出しちまってるじゃぁねぇか。電話番号なんかは、解約されたときから1年くらいは寝かしとくらしいけど、数百年も寝かしとくこたぁねぇだろ。 |
| 話がちょっと外れるかも知れねぇが、赤ん坊が時々醒めた目をしてじっと見つめてるなんてのを見たこたぁねぇかい? それとか、このオッサンなにしてんだい?ってな感じで軽蔑の目で見られていたなんて経験はないかい? 何か時々急に大人びた目つきをしていて、ギョッとしたこたぁ誰でも経験があるんじゃぁねぇだろうか。こんな時にゃぁね、あたしはこの話を思い出しちまうんだよ。もしかしたら、生まれたばっ | ★ | かってのは未だ前世の記憶が残っていて、その前世の目で見てるんだが、言葉が喋れねぇもんだからそう言わねぇだけで、そのうち喋れるようになった頃にはその記憶も消えていくのかも知れねぇな、なんてね。ま、赤ん坊の前でちょっと恥ずかしいことしちまったな、大人気ねぇ真似しちまったな、なんてぇ後ろめたさがあってそう感じるだけかもしれねぇんだが。 |
| この魂が、肉体を離れて次の肉体に宿るまでの間ってのは形がないわけだな。このときはどんな状態かってぇと頭と心しかないみたいなんだそうだ。めん玉も耳もひっくるめて一個しかねぇらしい。というより目玉すらないかもしれねぇ。何かを感じるものが一個頭にくっついていてそこで全てを感じているらしいんだな。ところで、あたしゃ思うんだが、そもそも魂に時間なんて有るのかいってことだ。どう言う事かってぇとだな、エジプトのお姫様が死んだ後、現世に姿をあらわすまでに数千年の時間が掛かっているってのは人間の時間の尺度で | ★ | 考えるから長いと思うわけで、魂の時間の尺度で考えると、死体から離れて次に宿る肉体を見つけるまでのほんの僅かな時間なんじゃぁないかってね。大体魂ってのがどんなもんか知らねぇが、肉体に宿ってる間はその肉体の持つ時間に合わしてるかも知れねぇ。だけど肉体から離れている間の時間なんてのはもしかしたら人間の考える時間みたいな概念がないかも知れねぇだろ? もしかしたらこのお姫さんに宿る前の魂は、もっと現在に近い時代に居たかも知れねぇなんて考えると結構面白れぇじゃぁねぇか。 |
| 何でこんな話になったかってぇとだな、いってぇ魂ってのは幾つあるんだ? って疑問から始まったんだよ。でね、もし魂の数に限りがあるってんなら、それは人間用とか虫用とかってぇ区別は有るんだろうかって考ぇたんだ。昔っから言うだろ? 一寸の虫にも五分の魂ってね。だから虫にだって魂は有るはずなんだよ。それから目には見えねぇが妖精とかにもね。それに木の精とか水の精、火の精とかね。これだってある意味、魂だと思うんだよなぁ。もしかしたら黴菌だって生き物である以上、善い悪いは別にして魂を持ってるかも知れねぇ。 | ★ | しかしねぇ、年齢逆行で前世を調べたら今は絶滅した○×菌だったなんてったら嫌だねぇ。 魂がね、輪廻でこの世に現れたりあの世に行ったりするってのはいいよ。要するに使いまわしが利くって訳だ。だけど消耗しねぇんだろうか。何回まで再利用できるんだろうかってね、つまんねぇこと考ぇちまったんだが、もし再利用に限度があるってぇとだね、ある魂が死んで、別の魂が生まれるとしたらだよ、その死んだ魂の魂はどうなるんだ? 切がねぇよな。 |
| じゃぁもし無限に再利用できるとするとだな、その魂の経験した人生というか虫生という奴は全て記憶されているんだろうかってぇのが気になる訳だ。と言うのもね、例のエジプトのお姫様は最後まで行かなかったとは言えもう少しで不倫をするとこだった訳だ。悪いことをしたんだから地獄へ行かされたかもしれねぇ。フランスの漁師にしても殺された訳だが、喧嘩の末だからやはり地獄へ行かされたかも知れねぇ。地獄でしごかれてとりあえず輪廻だからってんでね、現世に戻されたかも知れねぇがペナ | ★ | ルティでね、すぐには人間にするこたぁできねぇてんでね、何回かは虫にされたり、木にされたり、場合によっちゃぁ黴菌にされたかも知れねぇが、その間の記憶がなかったのかも知れねぇなんて考げぇて見たんだよ。記憶ってのは脳みそが受け持ってる仕事だろ? だとすりゃぁ脳みそのない木や黴菌にされてた頃の記憶がなくても納得できるだろ? まさか遺伝子の中にその記憶が埋め込まれてるなんて言うなよ。この二人の被験者は先祖をたどってもエジプトやフランスには縁がなかったそうだからね。 |
| 輪廻ってのは仏教の教えみたいだが、キリストさんの国にもダンテの神曲なんて本が有るじゃぁねぇか? 地獄や天国へ行った話しか書かれてねぇんだが、死んだ人間の魂が地獄へ行ったり天国へ行ったりしてる訳だ。死んだもんの魂がそこで停まっちまったら、魂口密度が過剰になって天国でも | ★ | 住み難くなるだろう? その先のことまでは書かれていなかったと思うんだが、多分生れ変わってるだろうと思うよ。何しろ、神曲を読んだのは小学校の頃子供用に翻訳された奴を読んだだけだからなぁ、細かいとこまでは覚えちゃぁいねぇんだが。 |
| さて、この魂がだ、現世に現れるのはどの時かってのがまた問題だね。人間で言うとだな、母親の胎内から外へ出るとき? それとも受精したとき? もしそれ以前だとしたら大変だよ。たとえば男が射精する時、若い元気な頃は一度に億単位の精子が飛び出すそうだからねぇ、1億2千万の日本人の半分が男として6千万人いる訳だから。そのうちの3分の2が億単位の精子を持っていれば・・・とても計算できねぇ。 | ★ | 女だって年間に12個以上の卵子を生産してるんだしね。もっと大変なのは杉花粉かな。だから、この辺は受精した時点とした方がよさそうかね。ま、そんなこたぁ置いといて、先進国は少子化傾向だってんでいいとしても、今世界は人口爆発に戦々恐々としてる訳だ。で、もし魂が人間用とか虫用とか、あるいは国毎にきっちり分かれているとしたら? |
| あの世で、魂を振り分ける担当者は悩んでるだろうねぇ。 『あ〜ぁ、またあそこで励んでるよ あそこは貧乏なんだから控えろってんだよ あらら、できちゃったよ 弱ったねぇ 今魂が品薄なんだけどねぇ そういやぁこないだあそこで死んだ○×の魂はどうした? お、帰ってきてるか。帰った早々で悪いんだが、 今度はあそこへ行ってくれねぇか』 『おい、魂が足りねぇんだが 未だ空きはできねぇのかよ。 しょうがねぇなぁ。今地獄で精進してる奴は? 未だ精進が足りません? んなこと言ってる場合じゃぁねぇんだよ とにかく連れて来い あのまんまだとまた犯罪者になるって? いいよ、構わないよ、あたしの子になるわけじゃぁねぇし』 なんてね。 もし国ごとに、魂の数が決められてるとしたらもっと大変だろうねぇ。 『お〜〜ぃ、中国の魂に空きはねぇか? 弱っちまったねぇ。日本だって最近は少子化とか言ってるけど、 それにしたって昔は数千万人しかいなかった人口が 今は1億2千万だよ。この間トルコで死んだ魂を ちょっと中国用に融通してくれねぇか・・』 とかね。 そのうちに融通が利かなくなってくるってぇと、 『弱っちまったねぇ、今は魂の空きがねぇってのに あんなに励んじまって、ほかに楽しみはねぇのかよ。 しょうがねぇなぁ。よしこの間死んだあいつの魂を 二つに割ってやるっきゃねぇか・・。 なに? 早死にする? そんなこと知るかよ 空きがねぇのに励む奴が悪いんだ』 『しょうがねぇなぁ。奥の手を使うか。 おい絶滅宣言を出された黴菌の魂が 結構あまってるだろ? あれは人間用じゃ有りません? なこたぁ分かってるよ 背に腹は変えらんねぇだろ? 脳足りんができるって? 知るかよ。そんなこと』 世の中見てるといるだろ? あいつってもしかしてゴキブリの生れ変わり? なんてのが。あの忠実さはまるで忠犬八公だね。犬の生れ変わりかねぇ? なんてのもいるし。いや実際、最近の脳タリンの若ぇ連中見てるとね、 あの世のどっかでこんな会話をしてるんじゃぁねぇんだろうかなんて本気で 考えちまうんだよ。 |
仏間1:仏間2